そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)

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本棚登録 : 261
レビュー : 35
著者 :
とし長さん SF・ファンタジー   読み終わった 

 SF・ファンタジーの作品を8編収録した短編集

 表紙のデザイン、各短編につけられているイラストはどこか可愛らしさを感じさせるのですが、内容は全体的にシリアスなものが多いです。

 表題作「そばかすのフィギュア」は、自分たちがデザインしたキャラクターが入賞し、その副賞として、デザインしたキャラクターたちのフィギュアが送られてきた学生たちが主人公。そして、このフィギュアのみそは、主人公たちが考えた設定に準じて、自立的に思考や行動をおこなうところです。

 このフィギュアたちの設定は、すでに相思相愛の王子と姫そして王子に叶わない片思いを抱く女の子です。そして、このキャラクター達をデザインした靖子は、王子に片思いを抱く女の子のアーダに、自分の今の境遇と重ね合わせます。

 アーダは王子と姫が結ばれることが王子のためと考えその恋心を隠し、王子のために行動し、また靖子も先輩のため、自分の気になる男性と先輩との仲を取り持ちました。

 そのため靖子は、アーダがなんとか王子と結ばれるようフィギュアのアーダの仕上げを丁寧にしたり、そばかすを消して、より顔をきれいに見せようとしたりと、なんとか二人を結び付けようとします。

 叶わない恋心とフィギュアのアーダの純真さが、可愛らしくも切ない短編でした。また靖子がアーダに自分の姿を投影する描写も、なんだかうなずけてしまえます。

 そしてアーダと靖子の二人の関係の結末も切なく、とても完成度の高い短編だったと思います。

 虚弱体質のため、ずっと無菌室で過ごしてきた女性と、彼女を世話するアンドロイドの姿を描いた「雨の檻」

 どんでん返しの驚きと、ラストの切なさが印象的です。

 美術学校に入学したものの、そこで居場所を見つけられない少年と、ロボットの交流を描いた「カーマイン・レッド」

 ピイの好きな色はこの、カーマイン・レッドなのですが、なぜ彼はその色を選んだのか?

 二人の交流を通して、人間と機械の壁がところどころで見られるのですが、それに対しピイは何を考え、カーマイン・レッドを選んだのか。それが分かる場面は、どこか胸が締め付けられます。

 クローン人間とオリジナルの会談を描いた「セピアの迷彩」

 オリジナルの夢見ていた一生を、なぞることを宿命とされたクローンとオリジナルの対面は、倫理的な問題や、それぞれの人生の問題が絡み合う、重厚で、そして残酷な短編です。

 短編集の中で最もファンタジー色の強い「月かげの古謡」

 強い領主を父に持ち、幼いころから力や強さが正義だと教えられてきた主人公が、父に認めてもらうため、財宝を探しにいきその先で不思議な女性と出会う短編。

 幻想的で静謐な描写も、主人公が徐々に領主としての責任や、この不思議な女性に好意を持っていく描写も素晴らしいのですが、単にハッピーエンドで終わらせず、静謐な描写と相まった、静かな寂しさの残る幕切れも、読者の心に残ると思います。

 初出から25年近く経った作品ばかりなのですが、それぞれの作品にある残酷さ、あるいは切なさは決して古臭いものではなく、今も、そしてこれから先も読者の心をとらえるものだったと思います。

第24回星雲賞〈国内短編部門〉

レビュー投稿日
2016年7月31日
読了日
2016年7月25日
本棚登録日
2016年7月25日
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