二階の住人とその時代 転形期のサブカルチャー私史 (星海社新書)

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  • 星海社 (2016年4月26日発売)
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今や世界の公海となった「OTAKU」という大洋に流れ込んでいる「おたく」という大河の源流をさかのぼる旅。その水源地は東京新橋の雑居ビル「大徳第一ビル」の二階、徳間書店の第二編集局なのでありました。そこでは『テレビランド』『アニメージュ』、その増刊号、別冊枠で『リュウ』『ロマンアルバム』という雑誌が作られていました。コンプライアンスなどという考え方がなかった70年代から80年代、たまたまそこにいた雑多な人々の雑多な想いが「アニメを楽しむ文化」という伏流水を地表に噴出させていく様子を、その現場にいた大塚英志が、まるでオーラルヒストリーのように、だけど独り語りで思い出し思い出し記述していく備忘録です。そこには「メディアの怪人」徳間康快がいて、彼が買った「アサヒ芸能」出身の尾形英夫がいて、全共闘の心情的シンパの鈴木敏夫がいて、歴史書編集者から手塚治虫の「虫プロ」に入った校條学がいて、そしてそこに引きつけられるように自分たち固有の文化として「アニメ」に魅了された世代が「二階の住人」として集まってくる日々の記憶の断片が面白い!指摘として最初の「おたく」の特徴を「リスト」と「上映会」としていることも面白い!富野・安彦〈ガンダム〉と宮崎・高畑〈のちのジブリ〉の間での鈴木敏夫の転向・再転向が面白い!著者とほぼ同じタイムラインでアニメを見て、アニメから離れた自分としては、この「サブカルチャー私史」は非常に刺激的です。それにしてもこの思い出を連載させたジブリの「熱風」という小冊子は、氏家斉一郎の「昭和という時代を生きて」の時でも思いましたが、時代の記録を残す貴重な存在ですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月4日
読了日 : 2018年11月4日
本棚登録日 : 2017年4月7日

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