堤清二が、もし父の地盤を継いで政治家になっていたら…もし父の遺産を放棄して西武百貨店だけを受け取るという選択をしていなかったら…もし「おいしい生活」というコピーがなかったら…もし渋谷に進出しなかったら…パルコを同級生の増田通二に託していなければ…数え切れない、もし?を抱える男、堤清二/辻井喬のオーラルヒストリーです。単なるインタビューではなく政治学の御厨貴、哲学の鷲田清一、経済学の橋本寿朗という異なる専門家からの言葉に反応することで炙り出される多面体としての堤清二/辻井喬が余りにも巨大で複雑で。でも重厚感ゼロ。高度経済成長の末期に現れ、80年代の空気を作った男は実に饒舌にディテールを語っていきます。自己評価でも軽薄という言葉を使っていますが、その軽さが「無印良品は反体制商品」なんて深い言葉を生んでいるのだと思いました。共産党→政治家秘書→ビジネスマン=詩人これがメタモルフォーゼではなく、始めっから同じものであったからセゾン文化は生まれ消えたのでしょう。「私のヒストリーは、ユートピアイズムの消滅の歴史ではなかったか、と感じています。」帯のこの言葉すごいです。そう、セゾンとは詩人が経営した会社なのだと思いました。
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- 感想投稿日 : 2017年12月25日
- 読了日 : 2017年12月25日
- 本棚登録日 : 2017年12月19日
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