英語学習7つの誤解 (生活人新書)

  • 日本放送出版協会 (2007年8月10日発売)
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言語学・認知科学研究者による、
(とりわけ日本人の)英語学習の
よくある誤解を取り上げて、
わかりやすくそれの間違いを正していく
科学的かつ実用的な読み物。

その誤解とは

誤解1「英語学習に英文法は不要である」
誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」

というもので、
なるほど、確かに全部を全部信じ込んでいる
人は多くないかもしれないが、
かといって、これらすべてを誤解だと理解できている
人もまた、ほとんどいないような言説である。

特に個人的には、
誤解1、2、5あたりがなるほどと思った。

1については、「ひたすら聴き流し」型の
英語教材が昨今取り上げられたりしているが、
それに対する適切な批判になるかもしれない。
もちろん、英文法理解がほぼ達成されている人なら、
聴き流しでも良いかもしれないが、
中高で習うレベルの英文法が充分身についていない状態で
果たして文章をたくさん聞いたところで
理解できるかは大いに疑問だ。

2については、早期英語教育神話といえようか。
確かにすべてのヒトの赤ちゃんは言語マスターの天才
であり
「母語は外国語学習で影響されるほどヤワじゃない」(p.84)
というあたりで、
著者自身でも、母語への悪影響ということは主張していない。
しかし、1にも関係するが、文法構造を理解するという点で、
既に母語を使って分析的思考や学習が可能になった年齢
(つまり中学生)くらいのほうが効率が良いということを
述べている。
なるほど、これは説得力がある。

また5については、
私達は日本人だが、「日本語について」の知識が充分な人は
どれだけいるか? というよりほとんどいないことを
例として挙げている。
日本語が使えることと「日本語について学術的知がある」ことは
ほとんど関係ないと言ってもよい。
したがって、英語についてもそれは同じで、いくら英語ネイティブでも
英語の文法構造や成り立ちなどの知識があり、それを教授に活用
できない人は、それはとても「良い先生」とは言えず、
その人から「外国語」として英語を習っても効率が良いとはとても言えない。


日本人のかなりの割合の人は(私も含めて)
英語コンプレックスというかなんというか、
そういう英語に対する抵抗感や恐れや恥ずかしさやら
マイナスな心象があるような気がする。

それがゆえに「楽して英語ができるように」とか
「あなたのお子さんはバイリンガルに!」とか、
あやしげな英語教育手法にぱっと飛びつきやすいのではなかろうか。

大事なことは、言語習得に関する科学的な真実を知り、
そして自分や、家族など、人生を送っていくうえで、
なぜ英語ができるようになりたいか?
それはどういう英語の使い方なのか?
ということを常に問いながら、
考え続けていくことではないだろうか。

本書で柔道の山下氏の事例が出てくるが、
氏は国際柔道連盟で活躍するためには英語ができるようになるしかないと
肚をくくって、英語学習を始めたという話であり、
著者は「これほどまでにはっきりした動機づけと目標があれば英語学習は
半ば成功したも同然」(p.198)
と述べている。

なるほど、である。
強い動機づけがあれば、それこそが最強なのだ。
明治維新期の志士たちがなぜあそこまで語学習得に
熱意を燃やし、成功させたのかというのも、
それはたぶん「日本を良くしたい」というすさまじい目標があったからだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育学/学習方法
感想投稿日 : 2013年5月27日
読了日 : 2013年5月22日
本棚登録日 : 2013年5月22日

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