おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書 55)

著者 :
  • アスキー (2008年3月10日発売)
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Windows95やIE3.0の開発に携わった中島聡さんが、ソフトウェア・サービスのトップ企業について持論を展開する。
後半では、ひろゆき、古川亨、梅田望夫の各氏と対談。

とくにまとまりのある本でもないので、印象に残った部分から抜粋。

p.205
中「自分で決めると責任を負うから上司に仰ぐのが日本の会社。
  全員がビル・ゲイツの思考(勝つこと)を持っているからその場で判断できるのがマイクロソフト。
  一生懸命考えたけどあとからジョブズが来て一気に変わってしまうのがアップル。」

p.210
中「ブログについて常々思うのは、死後もずっと読めるようにしてほしい。」
古「何年たとうが預かってくれるサービスとか。市場の可能性。」

p.237
中「トヨタの話。ギークとスーツの素養を両方持っていたからできたカンバン方式。」
梅「そういう人がハードウェア領域には膨大にいたからものづくり大国になった日本。しかしソフトウェアの領域にはほとんどいない。
  日本ではギークとスーツは憎み合う。米国ではあまりない。」

p.248
梅「80年代にソフトウェア産業にチャレンジしたのは、ゲーム系(任天堂の岩田さん他)とパソコン系(中島さん)。パソコン系で日本に残ったヒトは国際競争でマクロに見るとほぼ全滅した。かたやゲーム系は生態系を作り上げて世界的競争力を得た。
  21世紀で一番可能性がありそうなのはインターネット系。そこにリーダーが生まれ、日本発の会社が誕生する未来を期待したい。」

p.258
梅「グーグルがここまで成長したのは、小さい会社のときに成長の種があるから。
上場した今もそれを変えないよう努力している。でも、15,000人の規模になっては自然とサラリーマンっぽくなってしまう。ハングリー精神が失われる。そうならないという強烈な意思がアンドロイドには感じられる。」

p.264
中「僕らの書いたブログが将来の人から見たとき新たな私塾の始まりだったら、やはり残しておきたいじゃないですか。」

なるほど、Windowsの中核開発者だから(=過去)、中島さんの言説には価値がある、のではないのだ。
ソフトウェア時代を俯瞰して、今ある問題、未来への課題解決策を導こうという姿勢、それを実現する能力があるから、読み手(私)は大いに納得する。

特に梅田さんとの対談では、日本の企業・ビジネスがこのままじゃまずいでしょ!という警句に満ちており、考えさせられる。
「日本発のコンテンツ産業はすごいですよ! アニメ! ゲーム!」
なーんてよく言っているけれど、本質的なソフトウェア・サービスの点では日本発で世界に通じているものなんてほとんどない。
あ、ひとつあった。PSネットワーク。あれがダウンして1億人以上が影響を受けたのは、まさにグローバル。

日本はいまさら「ものづくり」大国を目指しても仕方ない。
「サービスづくり」を真摯に考えて実行しないと。
といっても、本書にあるように「ギークvsスーツ」とかの問題で力を消しあっているようなところに光は差さないだろう。
どーする日本…。

あとはミクロな話だが、自分のキャリアをどうしようか、ということについても
色々考える材料がいただけた。感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年6月15日
読了日 : 2011年6月15日
本棚登録日 : 2011年6月13日

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