インサイダー取引。
企業などの内部情報を事前に入手し、これらの情報に基づいて一般投資家よりも有利な立場で株の売買などを行う。
ご存知の通りこの行為は違法行為です。
本書は題名からも分かる様に、この違法行為を行なっている人は一体どの様な人物なのか、そして彼らの情報入手先は?と言った事を読者に解説し、これらを通して現在日本社会の実情を世間に知らしめている一冊です。
と言っても、堅い内容の本ではなく、著者自身の一時期インサイダー取引を行なっている人たちと関わりを持ち、また彼らの情報により利益を上げた経験を説明したり、これまでに摘発されたインサイダー取引とそれらに対するコメント、そして最終章では著者の現在に繋がっている人生の選択について書かれています。
本書で描かれているインサイダー取引を行なっている人たちは企業内部の人間ではなく、例えばSMクラブの風俗嬢(客が内部情報を勝手にべらべらとしゃべる)やホームセンターのバイト、元ベンチャーキャピタル勤務、公務員等です。
この様に決してインサイダー取引の舞台となった企業等の関係者という訳ではありません。
そんな彼らが内部情報を入手する先は、インターネットの掲示板やら人脈やら職場など様々で、これらから入手した情報に基づいてインサイダー取引に及んでいるとの事。
「インターネットの掲示板の情報で売買できれば苦労しないよ」と思われるかも知れませんが、例えば企業の大型合併などのケースだと準備などに携わった人の数は多く、
その人達やその周辺、そして場合によっては彼らを日頃観察する立場にいる警備員など様々な立場の人間が事前に情報を入手する可能性を考えれば、インターネット掲示板に情報が漏れないとは断言できません。
また、著者はインサイダー情報が徐々に拡散していく過程において、最後に情報を得た一般投資家たちがその銘柄の購入した時には、最初に情報を得ていたインサイダー取引を行う人たちはその銘柄を売り抜けている実態を解説しており、それに基づき、企業の決算情報などを基に株の売買を決めるファンダメンタル分析や株価の変化を示すチャートを基に売買を決める テクニカル分析はいつまでも結果を出し続けられるものではないと指摘。
そして、確実に結果を出すにはインサイダー取引しかなく、それを行うのに必要な情報はお金よりも価値があり、これを入手する為にどの様に行動するかが重要だと主張しています。
加えて、資金量が豊富であれば、ローリスク・ローリターンでも十分な利益をあげられる事も解説し、お金があれば更に有利になる事を指摘しており、消費のデメリットについて考えさせられる内容でした。
正直、本書の文章量は余り多くなく、書かれている事も一般的と言えば一般的な内容です。
ただその分読みやすい内容になっており、「いわゆる"エスタブリッシュ"な人たちが知っていて自分が知らない情報は何だろう?」と考え始める切っ掛けとしての一冊には最適ではないでしょうか。
世間で広く言われている常識や良識に囚われるだけではなく、今までの自分にはない物の見方や考え方、つまり新しい"視点"を得たければお勧めです。
- 感想投稿日 : 2012年5月8日
- 読了日 : 2012年5月8日
- 本棚登録日 : 2012年5月8日
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