ダンデライオン (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年7月23日発売)
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本棚登録 : 133
感想 : 17
5

鏑木警部補チームの3弾目。
今回は 姫野の 過去に焦点が すえられていく。
そして、より洗練されていく警察小説。
主眼は 警察ではなく その事件のもつ物語性を語ろうとする。
河合莞爾の優れた手法は 時系列を 巧みに 操って、
過去の事件を浮かび上がらせ、現在の事件とともに、
解明する。
今回は 姫野の父親の殺害、牧場での空飛ぶ死体、
屋上での開放密室ヤキトリ事件の三つが重なる。

『空飛ぶ少女』の童話の導入。
宮崎駿の 空から堕ちてくる少女 とリンクするが、
その童話は、幸福には 満ちていない。
三つの作品を見ても、解決することで、
幸せになるかと言うと そうではない 苦みがある。

たんぽぽ。野に一面に咲いたら、素晴らしい光景になるだろう。
その愛らしさが ダンデライオンとなり ライオンの牙とは。
たんぽぽが あふれる国が ユートピアであるが
それは 理想郷や桃源郷ではなく 何もない絶望の国とは、
言葉の質が 変遷していく。
たんぽぽの奇形で 原発反対運動を起こそうという企みも。

空を飛ぶ から 和服、呉服の話となり
なぜ 日本の着物は 振り袖が大きいのか?
という蘊蓄、
空飛ぶのに 重力が関係しているという ベルヌーイの定理
を使ってしまうのも、かなり オタク である。

元原、斎木、そして 巽。
それぞれが、独特の存在感があることで、
物語の 重厚さを つくっている。
次の作品が 楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 警察/司法
感想投稿日 : 2016年8月21日
読了日 : 2016年8月21日
本棚登録日 : 2016年8月21日

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