査察機長 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2008年1月29日発売)
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感想 : 30
5

実際にANAのパイロットだった著者が、パイロット物語。
成田から 雪の吹雪くニューヨークまでのフライトの中で、
新米機長 村井、ベテラン機長 大隅、そして 査察を担当する氏原。
3人をめぐって、村井と大隅の視点で 物語られる。

氏原に対する 村井の 風評からの人物評価。
そして、査察と言うものが どんな意味があるのか?
チェックされて 機長の職位が
剥奪されてしまうという心配から、緊張する。
一方で 村井は 職人気質なところがあり、
コンピュータの指示に従うよりも
自分の技量で 美しく着陸すると言うことにこだわる。

大隅はベテランであり、パイロットの教官だったりしたので、
チェック項目は ある程度心得ている。
コンピュータ操縦といえども、自分の身体で、
パイロット技術が染み着いている。
その技量がさりげなく発揮される。
『コンピューターは計算が速いが五感をもっていない。
空を見て雲を読み、位置を考えて風を知る。
高度と速度とパワーを決めて飛ぶ。それが、パイロットの基本だ』

氏原は、胃を痛めていて、インスタントなどは受け入れない。
無口で、無表情で、評価は厳しい。
しかし、物語が進んでいく上で チェックは教育の一環であり
機長は 前ばかりではなく、後ろに気を配ることが大切と語る。

フランスでは、コーヒーのことを
『悪魔のように黒く、地獄のように熱く、恋のように甘い』
ブラジルでは、いいオトコのことをコーヒーという。
『黒くて、熱くて、眠らせない』

乗っている飛行機のコックピットで 機長がどんなことを考ているのか
そのことが、リアルに語られていて、面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 航空産業
感想投稿日 : 2017年9月8日
読了日 : 2017年9月8日
本棚登録日 : 2017年9月8日

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