中国経済 真の実力 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2003年4月21日発売)
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現代技術論を専門としている視点から 中国の産業を分析して
日本の企業が どのようなところで 競争力を発揮するのか?
ということを 鮮明な形で 提示。
中国を客観的 冷静に見ていることが 非常に優れていた。

森谷正規はいう
『日本企業の技術力の強さを改めて見直さなければならない。というのも、その強さの状況が、1970〜80年代と90年代に入ってからとでは大きく変わっているからである。それが端的に現れているのが電機産業である。かっては先端技術を駆使して米国を抜くほどに圧倒的に強い技術力を誇っていた電機産業は、今多くの製品で国際競争力を失って、業績不振に陥り、経営はきわめて厳しい状況にある。一方、電機産業と並んで日本の産業発展の主柱であった、自動車産業は、乗用車で強い競争力を持ち続けていて、トヨタ、ホンダ、そして一時は倒産の危機に瀕した日産も、業績はすこぶる好調である。』(2003年)

なぜそうなったのか?
電機と自動車とでは 技術の本質が違うからである。

電機産業は
1 急速に進歩している情報機器とシステム 電子系電気製品
2 白物家電。機械系電機製品。
⇒技術はほぼ成熟していて,大きくは進まない。

なぜ競争力を失ったか
アセンブルのありよう と 部品の性格が変わった。
アセンブルがシンプル化して、高度な技能を持たない単純労働による生産が可能。
肝心の技術は 核心となる部品に内蔵されている。
一般の部品は標準化されている。規格にあうものをどこからでも調達できる。
受託生産のEMSが成り立つ。
EMSは、開発と生産を分離した。
アメリカで 開発され、台湾で実施された。それが中国に移転した。
日本では 開発と生産を分離するという思考方法が確立しにくかった。

パソコン;日本は米国と比べて開発、設計、生産に卓越していなかった。
米国は 台湾に 生産受託をさせた。それが 中国へ移転。

DVD;日本の技術であったが、中国の企業がアメリカのOEM生産をおこなった。
特許侵害があったが、2002年にやっと 中国メーカーは支払った。

携帯電話;日本は日本規格のものだったので、普及しなかった。

テレビ;既に成熟しているので中国で生産。

電子レンジ;格蘭仕は 衣料品メーカーだったが、92年に電機メーカーとなった。
低価格路線で あっという間にトップになった。
95年 中国国内50% 98年 70%になり、
世界の200社からOEM生産を受託している。
年間生産量 800万台。
世界の30〜40%のシェアーを占めている。 

PDP、液晶プロジェクター、デジタルカメラ、プリンター
は、日本の技術が 多く寄与している。
超LSIや液晶ディスプレーは 製造装置があればできる。

では、なぜ自動車産業は 違うのだろうか?
1 部品が多い。3万点ある。
  アセンブルが複雑で作業員に高い技能が要求される
2 部品に 機械系、電気系、電子系があり、複雑多様。
  性能の良いものを作るには、部品の品質が問われる
3 快適な乗り心地 hあ 最適設計がいる。
4 新車の開発、設計の作業は 熟練と経験がいる。
5 良いクルマを要求するユーザーがいる。
以上の5点が、なかなか簡単にはできない大きな要因。

でも、コピー車は できる。

何が 競争力の強さを維持できるのか?何が強さを失うか?
その違いは 蓄積の違い にある。

『自動車は、開発、設計,生産にも高度な技術が不可欠であり、それは長年の経験と深い蓄積によって、生じるのである。技術はヒトに蓄積され、企業に蓄積されて、それが産業を発展させる。ヒトに技術があるのであり、製造装置にあるのではない。自動車産業では、製造装置や製造ラインを購入しても、それだけでは良いクルマができない。』

経験と熟練とは 時間をかけて蓄積されるものであり、
それが 産業の力の差になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国
感想投稿日 : 2013年9月22日
読了日 : 2013年9月22日
本棚登録日 : 2013年9月22日

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