犬に噛まれたことによって起こる死の病を追う医者と、その犬に噛まれながら生き延びた逃亡奴隷の目を通しながら、異なる民族間での争いを描く。
これを異世界もので行なうのが、大変だったろうなと思います。医学の進歩の過程を設定しなければ、病の元に辿り着くことができないので、その流れをも登場人物の口を通して説明するのですから。
またその病にどう対応するかという点に於いても、征服者と被征服者の関係やそれぞれの民族の持つ倫理観などが入り交じり、単純に病を治す方法が判ればよいというものではないことも物語に奥行きを持たせます。陰謀と陰謀を掛け合わせるような感じなので陰鬱な感じになりがちなのですが、医者であるホッサルの真っ直ぐさと、もう一人の主人公ヴァンが手にする人との営みの描写が温かみを与えてくれます。
民族を越えてひとつの共同体となる姿を見せて、希望へ向けて終わる。そこが実に上橋菜穂子らしい終わり方でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年10月13日
- 読了日 : 2014年10月13日
- 本棚登録日 : 2014年9月30日
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