トーベ・ヤンソンによるムーミン以前の短編小説集。
どの作品に出てくる人たちもどこか役割を演じているような、背景すらも書割りであるような雰囲気がありながらも、そこに確然といるという存在感も示しています。そしてそこに出てくる人物たちは、他の人物をまたはその場所自体に役割を与えそこに自分を投影させようとします。謂わば勝手に相手の理想像を作り上げ勝手に失望もし勝手に諦めるのです。
若い女性は芸術家に、老いた男は若い娘に、新婚夫婦は旅行地に対して、芸術家は芸術に対して、故郷を去ったものは故郷に対して自分の理想と諦めをぶつけていく。果たして現実は何処にあるというのか。
それでいて読後感は陰惨な感じを与えず、さっぱりとして清々しさすら感じさせます。その清涼感は作者自身が持っていた性質によるものだったのか。諦めの先に未来があることを示唆しているのか。実に面白い感覚でした。
読書状況:読み終わった
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在庫なし
- 感想投稿日 : 2017年6月21日
- 読了日 : 2017年6月21日
- 本棚登録日 : 2017年6月17日
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