寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)

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本棚登録 : 1772
レビュー : 211
著者 :
あずささん 日本小説   読み終わった 

連日の東北地震の報道を通じて、死が圧倒的な質量でもって理解を迫ってくる中で、弔いというものについて考えていました。
そんな時にこのタイトルを見て、不謹慎なのかもしれないなと思いつつも、恐々手にとってみました。
一つの街に溢れる、もうこの世を去ってしまった者への弔いの連鎖。
グロテスクなのに、美しい。小さい頃に、アザミの花のボタニカルアートを見たときの感覚がふと思い出された。
「死」という日常の出来事であるはずのことを非日常的に描くことで、より死を感覚的に理解(したような気に)させてくる。surrealismなのかなこれは。

弔いの方法は様々だけれど、どれも哀しいほどに生きていることを象徴する行為で・・なんとなく、自慰に似ている。
自分の中に残る、その人についての記憶を手繰って、自分を慰める。
そういう意味で私は「弔い」の「みだら」さを捉えます。でも「みだら」ってそもそもなんだろうね。
なんにせよ弔いは、忘却への導入ではないんだろうな。

それにしてもこの、読み終えたあとの落ち着かなさは何だろう。ここにいてはいけない、抜け出せなくなる、という密やかな切迫感が擦り寄ってくる。
死の胸ぐらを掴まえて、真摯にその目を覗き込んだような作者の度胸が、怖いけれど魅力的。自分にとって「死」が遠いからなおさら。

レビュー投稿日
2011年4月14日
読了日
2011年4月14日
本棚登録日
2011年4月14日
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