完本 しなやかな日本列島のつくりかた: 藻谷浩介対話集 (新潮文庫)

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toyosuke1206さん  未設定  読み終わった 

未曾有の人口減少社会に突入、様々な課題が噴出する中で、いかにして「しなやかな日本」を作っていくべきか。課題現場の最前線に身を置き、量的な拡大よりも質的な面白さを求めて奮闘している13人の方々と藻谷さんの対話を通して「現智(現場から生み出され磨かれた智慧)」が学べる一冊。
山万の街づくりの話は、地元が近いだけに感慨深い。あんな想いをこめて、丁寧に街を作っていたとはつゆ知らず。地元に帰った機会に、じっくりと街散策したい。

・現場の現実を見ずに、自問自答というプロセスをすっ飛ばして、結論だけを欲しがるのは性質の悪い省力化。答えは現場にしかない。一般論は存在しない。ケースバイケースの工夫があるだけ。

・市場原理が働く前提として「他者への同感」「自己規制」が必用だが、この前提が置き去りにされてしまっている。

●商店街 新雅史
・商店街とは、百貨店に対抗して、多業種を秩序正しく並べた横の百貨店。

・個人を解放したことにより、長らく続いていた「近代家族(男性が働き女性は産み育てる)」が労働者を再生産することを前提にした戦後システムは崩壊した。

・後継ぎが居なく先の見えない物件に固執する。結果、不動産が死蔵化、虫食いだらけのシャッター商店街が生まれる。商店街は内部から崩壊する。

・日本には「本場」という言葉がある。「場」に対してのコダワリが強い民族。自分の死を越えて次に残すべきものとはなにかを考えた時に、その一つに「ワガマチの商店街」があってもよいのではないか。

・商店街という場を次の世代に繋げていくためには、物件や土地を個人に属する物ではなく、商店街というもっと大きな枠組みで捉えなおし、公共で管理していく工夫が必要。

・ショッピングモールと商店街とでは、愛着心は異なる。自らのリスクを背負って店を出している場があることで初めて愛着は産まれる。

●赤字鉄道 宇都宮浄人
・赤字路線の鉄道は廃止すべしとの論調が強いが、道路と鉄道どちらの方が費用対効果高く運営できるのか。イコールフィッティング(競争の土台をそろえる考え方)で、冷静に考えるべき。運営費用でみれば、道路よりも圧倒的に鉄道の方がかからない。道路は線路よりも設置面積が広い上に、鉄のレールに比べてコンクリは摩耗しやすい、外灯の設置数も断然道路の方が多い。豪雪エリアでは除雪費用も比較にならない。

・車を降りて歩いてくれる人が増えないと、商店が潤うことはない。鉄道廃止して車社会になるということは、商店の売上を目減りさせることになる。

・インフラで一番赤字を出しているのは郊外に引かれた上下水道と街路。建設費だけでなく、その後のランニングコストも高いのに、採算をとるものという思想が無いので赤字でもメスが入らない。

・ネガティブチェックだけが得意な人が増えている。ネガティブな意見に与さないと弾圧されるような謎の現象も起きている。衰退社会において相互にネガティブチェックをするのは自殺行為。

・世代交代が進めば住む場所のモビリティが高い時代になり、コンパクトシティが進んでいく。

●ユーカリが丘 嶋田哲夫
・当たり前だが街は年を取る。そのことを前提に、丁寧で地道な都市計画をしていかなければならない。開発して売り抜けて終わりというフロー型では立ちいかない、その街が永続できるように細目に手を加えてストック型で考える。

・駅前にコミュニティホテル、文化センター、シネマを誘致、街としてあったら良いなを洗い出し一つ一つ形にする。環状線の都市レールを敷き、その周りに町を順番に作っていく環状線の内側は里山として保存する。老幼一括園へのチャレンジ、要介護の両親と同居は出来なくても近居が出来る街作り、現代の姥捨山は避ける。街の景観を守るために、年間2~3万円を皆さんから徴収し、庭の手入れを請け負う。

●観光地 山田桂一郎
・通り過ぎる人をカウントしても大した経済効果をもたらさない、泊った数と経済効果は相関がある。来訪者数ではなく、総泊数を指標に持つ。

・来訪者数を指標にすると、いかに一見さんを取り込むかに躍起になり、ややもすると薄利多売になりかねない。リピート泊数を重要視する。

・官ではなく、民でもなく、住民自らが街としての公益性を追求する「公(パブリックク)」な活動が必用。
地域で暮らす人たちが地域経営に関わりながらライフスタイルを豊かにしようとしないと、観光地は活性化しない。

・テーマパークのような一時的な「非日常」ではなく、地域に根付いたライフスタイルの「異日常」が最大の売りのポイントになる。

・誰もが自慢し、誰もが誇れる町を目指す

・子供たちを巻き込む、子供たちが頑張っている姿を見ると、大人達も自然とみっともない格好は見せられないと、動き始める。

・国よりもまず市町村ありき。隣の町は外国の感覚。市民一人一人が、我が町をどう発展させるかを考える、そういう民度が必用。

・町おこしで失敗している所が必ずやってるのが、B級グルメ、単発イベント、ゆるきゃら。ゆるきゃらは失敗OKのズレ感を楽しむものなのに必死さが滲みでてる時点でゆるくない。単発イベントはイベント終了後の活性化までデザインされてない、頑張れば頑張るほど疲弊していく。本当に良いA級のものから仕掛けずに、自らB級に質を下げて乱売しても誰も幸せにならない。本当に良いものの価値を伝えて、地域のブランド価値を高めるべき。

・地産地消ではなく、地消地産。地元の良い物こそ地元で積極的に活用し消費することで、地元に人を呼び込む。3つのだけ「ここだけ」「いまだけ」「あなただけ」。

●空き家活用 清水義次
・家守とは、江戸時代に不在地主に代わって家屋などを管理していた長屋の大家さん。現代版家守とは、家守を現代に蘇らせて、遊休不動産を活用した街づくりをする。

・家賃断層マップ。突然家賃が大きく下がるエリアがある。このエリアの境目がエリア活性化を仕掛ける場所として狙い目。

・オンサイトで集まることで、クリティブな相乗効果が産まれる。

・CCを多用すると、みな自分事として読まなくなり、責任を負わなくなる。

・農業支援図書館。図書館の中に産直売場を併設。

・街を消費だけでなく生産もする場に変えて行く。

・リノベーションは5年で回収できるかを軸に考える。コストの嵩む耐震工事も減築を視野に入れることで低価格で実現する。

・営業生活権。人は自分で営業して生活を営む権利がある。大企業の部品として生きるだけがすべてでは無い、営業生活権を取り戻すことを考えて欲しい。


●農業再生 神門善人

レビュー投稿日
2018年10月17日
読了日
2018年10月16日
本棚登録日
2018年10月16日
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