セイロン亭の謎 (新潮文庫 ひ 5-12)

著者 :
  • 新潮社 (1998年3月1日発売)
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本棚登録 : 103
感想 : 13
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タイトルが『セイロン亭の謎』。「セイロン」という紅茶産地の地名に引かれて読んだ。

自分ひとりで面白がって、私はこういう本の選び方を時々する。引っ掛かるキーワードがいくつかある。

紅茶は好きで良く飲む。本格を気取る気などさらさらないが、ティーバッグではなく、必ず茶葉を使ってポットで淹れるくらい好きだ。ケーキやパンのお供もほとんど紅茶だ。

重めで味の濃い、たとえばガトーショコラなどの場合はコーヒーにするが。

たまに茶葉を買いに紅茶専門店に行くと気持ちがうきうきと浮き立つ。たくさんの種類の紅茶に囲まれ、その香りに包まれると、とても心が落ち着く。香りには鎮静効果もあるのかもしれない。味、香り、そして水色(すいしょく)にホッとする。
だから、紅茶を飲みながら読書することもよくある。本はミステリが多い。

本書は、ネットで紅茶関連のサイトでたまたま紹介されているのを見つけた。
紅茶とミステリ。好きなもの2つの組み合わせだったので読んでみたくなった。
ただ、平岩弓枝さんの名前は知っていたが、読むのは初めて。ミステリを書いていたことさえも知らなかったので、さてどんなもんだろうかとちょっと不安ではあった。ワクワクしながら読みはじめた。

物語は、紅茶専門店「セイロン亭」の社長が殺されるミステリ。
密室といえなくもない設定。でも、かなりユルイ。昔の推理小説の雰囲気。西洋館で起こる殺人事件はまさにそんな感じ。館も妖しい。何か秘密が隠されているのでは。読んでいて、古典的ミステリを読んでいた昔を思い出した。幼かった頃に覚えた、気持ちの高鳴りに似たものを感じた。

ミステリとしては決して高い評価は得られない作品だろうが、舞台設定は独特の雰囲気をうまく醸し出している。古い西洋館というのがやはりいいのだと思う。だから、この作品はその雰囲気を単純に楽しむのがいいのかもしれない。それこそ紅茶でも飲みながらのんびりと。
正直なところ、私はミステリ部分よりも、紅茶についての薀蓄の方に注目していた。ただ、それも詳しく語られているわけではなかったので、ちょっと残念だったのだが。本書の繫がりで、『紅茶の教科書』という紅茶専門家の方が書いた本も読んだ。様々な紅茶の違い。ミステリのトリックに使えないかな、なんてことも思いながら読んだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 英国と紅茶のパンジェンシー
感想投稿日 : 2010年2月9日
読了日 : 2010年2月27日
本棚登録日 : 2010年2月9日

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