江戸時代のロビンソン: 七つの漂流譚 (新潮文庫 い 96-1)

著者 :
  • 新潮社 (2009年9月29日発売)
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【本の内容】
大黒屋光太夫、土佐の長平、尾張の重吉―鎖国下の江戸時代に不慮の海難事故に遭って漂流しながら、旺盛な生命力で、奇跡の生還を果たした船乗りたちがいる。

『ロビンソン・クルーソー』研究で知られる著者が、彼らの肉声をもとにした詳細な記録を読み解き、それら漂流譚から七人を選んで、江戸時代の漂流者たちの壮絶なサバイバル物語と異文化体験を紹介する。

付・江戸時代漂流年表。

[ 目次 ]
はじめに―「海の論理」
序章 漂流の背景(「鎖国」の本質;太平洋長期漂流の発生)
第1章 無人島漂着編―鳥島サバイバル(志布志のロビンソンたち;新居のロビンソンたち;土佐のロビンソンたち―無人島長平)
第2章 異国漂着編(北方のガリバー―大黒屋光太夫のパフォーマンス;南方への漂流―大野村のガリバーたち;博多のロビンソン―唐泊孫太郎ボルネオ漂流記;尾張のオデュッセウス―船頭重吉の苦労と語り)
あとがき「頭で漂流、心でサバイバル」
江戸時代漂流年表

[ POP ]
江戸時代、日本では多くの漂流譚が生まれた。

外洋航海の技術は進歩しなかったものの、和船は頑丈で沈まず、長期の漂流を乗り越えて生き延びた人々がいたからだ。

本書は『ロビンソン・クルーソー』の研究者が、江戸の文書を読み解き、七つの漂流譚を紹介する。

印象的なのは、太平洋にある無人の火山島・八丈島鳥島を舞台にした三つの漂流事例だ。

鳥の落ち餌を拾い、アホウドリを捕らえ、火山の噴火口近くまで行って火を採取する。

孤独と郷愁の念から自殺しかけながら、念仏を唱えて現実と向き合った者もいた。

生きる気力を保つ執念、実験的な行動、自己分析力……。

「奇跡」の生還が偶然ではなく、努力と工夫の結果だったことがわかる。

大黒屋光太夫などの異国漂着の事例も、異文化交流の原初の姿を伝えているようで興味深い。

環境に順応し、底知れない生命力を見せる人々の力強さに、身震いするほどの感動を覚えた。

[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ワンコイン文庫(新潮文庫)
感想投稿日 : 2014年8月25日
読了日 : 2014年8月25日
本棚登録日 : 2014年8月25日

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