アルト・ハイデルベルク (岩波文庫 赤 427-1)

  • 岩波書店 (1980年2月1日発売)
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感想 : 8
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マイヤー=フェルスター(1862-1934)による戯曲。1901年作。19世紀後半の旧き良き大学街ハイデルベルクを舞台にした、いつだって過ぎ去ってしまうばかりの永遠の一瞬のような青春時代の哀歓。学生と町娘の若い恋、何処でもいつの時代にも繰り返されているであろうありふれた物語、しかし当人たちにとっては生涯立ち帰る場所。こんな典型的な物語を、奇を衒うことなく単純に美しく描いているという点で、まさに古典の名に値する。

"・・・だからこそ、いつまでも若くあってほしい。カール・ハインツ。わたしがきみに望むのはそれだけだ。いまのきみのままでいてくれたまえ。連中がきみを別人に仕立てようとしたら――みんなよってたかってそうするだろう――そうしたら断固戦うんだ。いつまでも人間のままでいるんだ。カール・ハインツ、若々しい心を持った人間で――だがおそらくいつの日にか、今日のいまとはちがう考えになって、このハイデルベルク時代やらわたしのことを想いだす時が来るかもしれない。・・・すると連中は声をそろえて、さようでございますとも、あの短い期間は殿下のご生涯にとりまして、ふさわしからぬ不協和音でございました、などときみに言いふくめるだろう。でも、そんなことは信じてはいけない。"

本国ドイツでは忘れられた本作も、日本では旧制高校の頃から親しまれているという。ここに描かれている19世紀後半のドイツ学生の気質や風俗が、日本の旧制高校の雰囲気と通じているような印象を受けるのも、偶然ではないだろう。

奇しくも今日は、大学時代の親友の誕生日だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドイツ文学
感想投稿日 : 2011年3月27日
読了日 : 2010年8月6日
本棚登録日 : 2011年3月27日

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