「愛」を「生殖」に従属させるという発想が、そもそも即物的なイデオロギーだ。「種の保存」だとか「本能」だとか、誰が言い出したか知らない匿名のテーゼに束縛される必要は全くない。
生殖可能性を根拠に「異性愛+結婚=自然、同性愛=逸脱・病気・犯罪」という異性愛主義(heterosexism)と同性愛嫌悪(homophobia)が"正当"化される。恣意的なジェンダー規範の強制から自由でいられる社会を望むならば、それは同時にセクシュアリティの規範からも自由でいられる社会でなければならないのではないか。「性愛」というのは、個人のアイデンティティの奥深くに根ざしているものの一つだ。多様な生/性の在りようを包容できる社会が望ましい。
同性愛者は、往々にして「性」の側面ばかりが強調されて、常に同性間セックスのことばかり考えている「性的存在」とみなされてしまう偏見についての指摘は、興味深かった。
具体的なケースを通して、セクシュアリティの問題に限らず社会的マイノリティとどのように向き合っていけばいいか、考えさせられる本。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2011年3月27日
- 読了日 : 2010年4月4日
- 本棚登録日 : 2011年3月27日
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