シュルレアリスムの概説書。著者による序論と資料集(宣言・雑誌・重要著作・詩などからの抜粋、更に人名辞典も)から成る。
シュルレアリスムは、ロゴス(言語・論理・理性・自己意識)によって断片化された存在の全体性を希求して、反合理主義へと傾いていく。理性の軛を逃れているとされた夢・無意識・狂気・幼児性・未開原始文化・オカルティズム etc. を無垢な自己/世界の現前として称揚し、その純粋性を表現しようと多様な実験的手法を用いた。
しかし、「ロゴスを否定する」ということの内には原理的な矛盾が含まれてはいないだろうか。というのも、「ロゴスは否定可能か」という問題を設定することそれ自体が、否定しようとする当のロゴスそのものを予め前提した上で、初めて可能となるのではないか、と考えられるからだ。加えて、反ロゴスを唱えた瞬間、当の反ロゴスそれ自体が、ロゴスによって捕捉されてしまう i.e. ロゴスは反ロゴスをも包含する、という事実もある。シュルレアリスムには、ロゴスに孕まれるこの自己関係的機制(ここでは、反ロゴスもロゴスそれ自体によって可能となっている事態)に対する自覚が全く欠けている。反合理主義を無邪気に志向しているのがその証拠だ。この点がダダとの決定的な違いであり、シュルレアリスムを以てダダの退化形態と見做す所以である。ダダには自己否定に到るほどの徹底性があったが、シュルレアリスムは遂に自己反省を為さなかった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2011年3月26日
- 読了日 : 2008年12月10日
- 本棚登録日 : 2011年3月26日
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