愚者のエンドロール (角川文庫)

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本棚登録 : 8692
レビュー : 916
著者 :
制作 : 高野 音彦  清水 厚 
くわっぱさん 現代物   読み終わった 

「リップサービス」。
それを正面から真に受ける人と、発する人。
でも女帝・入須の場合は敢えて<故意に>発したものだから、サービスどころじゃないよな。悪意にさえ思える。腹黒コワイヨー。

何のためか。
奉太郎は何の証拠もないためあくまでも「想像」の域で推論しているが、入須は【奉太郎を踊らせるためだけ】に才能を持ち上げた。それに対して、彼女は直接的な表現で返していないのでコレはもぅ色々と解釈できる。
この作品は大体において登場人物が「1+1=?」と聞いても、「1.5+0.5」「4/2」みたいに直接的な対話表現をしないので幅広い解釈が出来て面白い(笑)


中でも一番気になる場面は、入須と供恵お姉さんが最後にチャットで会話しているところ。ここで、お姉さんは具体的な証拠なくズバッと
 「脚本の子を守るためじゃなく、脚本の出来のために、そしてその子を傷つけることなくオタメゴカシやってみたんでしょ」
と指摘しているが、それに対する入須の返事からは

①思わず核心突かれて言い訳(暗に肯定)
②心からそうじゃない、違う、反論せねば(全否定)
③本当はそうだけど、見栄とプライドから反駁(肯定・否定半々)

と様々に解釈出来て妄想広がる。アニメでは核心突かれて勢い任せにタイピングしてたので③寄りだったかな?
言い訳を聞く前に、お姉さんのログアウトで入須の話が封じられたのは絶妙なタイミング。
奉太郎は弄ばれる結果となって主人公側としては最後が苦いまま終わったが、この供恵お姉さんの論拠なく核心に近い指摘したことで多少報われた感じがした。
入須とお姉さんの間にどんな付き合いがあったのかは謎だけれど、

「(奉太郎に申し訳ないことをしたと)本当にそう思ってる?」

と文章挟んだだけでお姉さんの入須に対する人物評価が窺える。それを本人に話すあたりが流石です、お姉さま。
そもそもこの古典部シリーズでは、お姉さんの慧眼が随所に光る。それらが作者側で無条件にすべて正しいとイメージしたものなら、今回の入須の人物評価や動機もすべて本質に近いんだろうな、と思った。

人を乗せるだけ乗せて、手駒にされ、そのうえ凡人という自己評価を再認識させられた気分は苦いよなぁ。
でも自己評価と他人の評価は必ずしもイコールじゃない部分がある、そして他人も自分も知らない本質があるもんだよ、自分の可能性をもう少し信じてみようよーと奉太郎に声かけたい。


第5章の題名が『味でしょう』とagitation(煽る・煽動する)の語呂合わせ。
このセンスがツボ!!
『愚者のエンドロール』というタイトルが意味する『愚者』に何が込められているんだろう。どんな意味があるんだろう。

①タロットの愚者がシンボル・千反田のオチで締めた最後
②入須に良いように扱われた被害者・奉太郎の作品
③2-Fの作品を見破れなかった者たちに贈る言葉
④本来の目的は果たしたが思わぬところで本意を暴かれた詰めが甘い女帝・入須

わたし気になります!
妄想広がる作品で面白かった。

レビュー投稿日
2014年8月30日
読了日
2014年8月30日
本棚登録日
2014年8月30日
2
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