教育工場の子どもたち (講談社文庫)

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本棚登録 : 33
レビュー : 5
著者 :
辻井貴子さん ルポ・ノンフィクション   読み終わった 

1983年の著。戦前の日本の状況について書いたものかと思った。もちろん、筆者の年齢を考えればそんなはずはないことはすぐに分かるのだが、、、それぐらい、時代錯誤で封建的、軍隊もかくや、というほどの規律に縛られた異常な状態が記されている。教師から生徒への横暴はもとより、教育委員会から学校、すなわち校長に対する締め付けや、それが助長する閉鎖的な隠蔽体質など、自分が学校に通う年齢だったこの時代に、こんな現実がまかり通っていたなんて、衝撃である。嘘だと信じたいが、私は、生まれ育った地域や周囲の環境のおかげでたまたま、これらのことに触れずに生きてこられただけ、幸運だっただけ、いうことなのだろう。
あるいは、見えていなかっただけなのか。
最近、体罰やいじめの問題が毎日のように取り沙汰されているが、これらは皆、何もここ最近に始まったことではない。手段や現れ方には多少の変化があるとしても、そもそもの根源は何も変わっていないのだ。
人間は見慣れてしまうと、その事柄について何も感じなくなってしまう、見ないふりをすることが普通になって、本当に見えなくなってしまう、良くない順応力があるという。自分に直接の被害がないことに甘んじて、見過ごしていることはないだろうか。新聞の、戦慄するような教育現場の実態を報じた記事を、「またか」と読み飛ばしてはいないだろうか。
沈黙は同罪に等しい。
自戒の意味も含め、非常に考えさせられる一冊だった。

レビュー投稿日
2013年2月15日
読了日
2013年2月1日
本棚登録日
2013年2月3日
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