戦後から戦前の社会を俯瞰し、精神史的なアプローチでその思想を読み解く論集。
著者の神島二郎は丸山眞男の弟子であり、この論はまだ学問的訓練を受けはじめのものであった。多数の引用があり、切り口も鋭いものの、多少私見が差し挟まれるところあり、論理の飛躍あり。ただし注意して読めば、道は外していないな、という感はある。
近年は言説分析と文化人類学とが流行りで、あまりこういった民俗学と思想史を結びつけるような研究は流行らない。しかしながら、神島もいう通り、生活から完全に独立した思想史というものはことに日本では想定し得ないのであり、今までの研究を基盤にもう少し俯瞰的な研究が出てきてもいいのではないか、その方向性としてこの論(最初の論文以外は今ひとつだが)は活きてくるのではないか。丸山の弟子はみんな丸山を越えられないからダメだ、で切り捨ててしまっては勿体無いのではないかなぁ(だからといって神島かよ、というツッコミはなしで)、と思うのである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
蔵書A群
- 感想投稿日 : 2012年10月11日
- 読了日 : 2012年10月11日
- 本棚登録日 : 2012年10月11日
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