日はまた昇る (岩波文庫 赤 326-1)

  • 岩波書店 (1958年9月25日発売)
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本棚登録 : 209
感想 : 16
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この旧い訳がいいのだ。第五十一刷、後書きの最後には昭和三十三年夏とある。見所の汚い、皮肉った言い回しと表裏にある知的さなんかが、少し時代遅れの日本語で訳されているのでよく出ている。

ハードボイルドの先駆け。ここからチャンドラーが生まれ、そして村上春樹が生まれたのだ。
この頽廃的な感じは、あるいは今の時代には合わないかもしれない。今の人々(特に若者)は頽廃的ですらないからだ。頽廃も一つのパワー、知的さ、傾向だとすれば、今の時代には何が残っているのだろう? ここには無知、無関心、無為が横たわっているだけだ。そして、この本を読む若者は言うだろう、「下らない」と。ではなにが下るというのだ?

無為の世界に栄光のあらんことを。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 蔵書C群
感想投稿日 : 2012年2月28日
読了日 : 2012年2月28日
本棚登録日 : 2012年2月28日

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