さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)

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本棚登録 : 6558
レビュー : 589
著者 :
制作 : 羽住 都 
hotaruさん その他   読み終わった 

人生の機微や悲しさ、愛おしさ、そして、残酷さまでも、余すことなく、乙一さんらしい、淡々と乾いた語り口の文体で書き記した短編集。

収録作品は以下の4編。
「未来予報」
人生の不確かさと、別れの悲しみ、それでも残った希望が、一人の男性の少年期から青年期を通して描かれた作品。

「手を握る泥棒の話」
金策のため、窃盗を試みた男。大金の入ったカバンを盗もうと、外から穴を開けた押入れの向こうに手を伸ばしたけど、掴んだのは少女の手で…。

「フィルムの中の少女」
大学の映画研究会に所属する内気な女学生。彼女は部室で謎のフィルムを見つける。
再生したところ、画面には映るはずのないものが写っていて…。
怪談としてはシンプルかつベーシックな展開。
けれど、恐怖と悲しみにかられながらも謎を追う女学生の人生の岐路に関わる描写が、幽霊の少女のそれと巧みに重ね合わせ、織り交ぜられているおかげで、不思議と胸に残りました。

「失はれた物語」
交通事故で植物人間状態となった男性。彼は、わずかに右手の人差し指だけが動かせた。
そのわずかな感覚だけで、妻や娘と意思疎通を図ることに。
しかし、動かない肉塊として家族の重荷となっていることを痛感した彼が選んだのは…。

抑揚の少ない語り口なのに、決して味気ないということはなく、むしろ、人生の岐路の捉え方、そこに至るまでのきめ細やかな感情の変遷の描き方が、強く心に残る作品でした。

レビュー投稿日
2018年7月10日
読了日
2018年7月10日
本棚登録日
2018年7月10日
4
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