初夜 (新潮クレスト・ブックス)

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本棚登録 : 523
レビュー : 61
制作 : 村松 潔 
hotaruさん 悲劇   読み終わった 

いかにもイアン・マキューアンらしく、緻密で、静かで、残酷な物語。
ほろ苦いなんて言葉では済まない人生の無情を、理知的な言葉で、対立する登場人物の立場や思惑やエゴをこれでもかと暴きたてながら、容赦なく突きつけてくる。

結婚式を挙げハネムーン初夜を迎えた若い夫婦の行き違いとその後を、そこに至るまでにそれぞれが辿った人生や二人が幸せを分かち合った時期のエピソードを挟み込みながら描いた作品。

所属階級や育った環境の違い、それぞれの家族が抱える問題や関係性…。
ボタンのかけ違いは、小さいようで、大きく。
まだ若く未熟だった二人の間に横たわる埋溝は埋まらず…。

読み手に、どうして、という疑問や感傷、余韻や想像の余地を与えないほどに、残酷なまでの明快な言葉で、二人で歩むはずだった幸せな未来の破綻の原因を述べ尽くしてしまうマキューアン節は好き嫌いは別れるだろうなあ、と思います。

しかし、人生におけるすれ違いを、これほど緻密な残酷さで描ける作家はやはり彼しかいない、と思い、ついつい手に取ってしまう、不思議な中毒性…。

「胸に帰来する感傷や悲哀」なんて生易しい言葉では全く足りない、胸の弱い部分を容赦なく針でブスリ、時には、鋭い刃でグサリ、と刺されるような痛みをあえて求めて味わってしまう私はマゾなのか…。
いや、マキューアンが描く登場人物が抱えるエゴや足掻き、そして失敗の経験が、少なからず私の中にも確かにあるってことを痛感して、すごく嫌なのに、それでもどこか共感してしまうからかもしれない。

この短い感想を書く間にも、くどくどしく何度も「残酷」という言葉を使ってしまったけれど、マキューアンの作品は「残酷」という言葉が、本当に何よりもよく似合うと思うのです。

マキューアンに興味がある人、彼のファンにはオススメ。

レビュー投稿日
2018年10月2日
読了日
2018年10月2日
本棚登録日
2018年10月2日
3
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