人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫 た 30-11)

著者 :
  • 中央公論新社 (1978年3月10日発売)
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本棚登録 : 764
感想 : 97
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得体の知れないモノがもつ怪しい美しさと強烈な吸引力、そして、それに囚われる破滅に近い幸福を、豊富すぎるぐらい豊富な語彙を組み合わせた美文調で賛美した、大人の童話とでもいうべき二編。

ビアズリー の「サロメ」を彷彿とさせるモノクロの繊細な線画が印象的な水島爾保布の挿絵二十余点が、艶麗な世界観を下支えしています。

収録作は「人魚の嘆き」と「魔術師」の二作。
どちらもとても短い作品で、ストーリーにどっぷり浸ることができるというタイプではないのですが。

美を形容する言葉って、こんなにヴァリエーションに富んでたのね、と感心せずにはいられません。

美辞麗句のオンパレード…いえ、洪水です。
美しい言葉たちを愛でさせてもらったな、という満足感があります。
愛でるというのは、音律だけでなく、視覚的な意味でも。

玲瓏はまだしも、瑰麗、杳遠、皓潔…これまでほとんど出会うことなかったし、これからもきっとほとんど出会わない。 

どっぷり浸れる谷崎ワールドを求める人には少し物足りないかも知れませんが、美的語彙力はどの作品にも増してこれでもかというぐらいにキレッキレなので、それを目当てに読むには短いしおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2020年5月9日
読了日 : 2020年5月9日
本棚登録日 : 2020年5月9日

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