羅生門

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本棚登録 : 513
レビュー : 48
著者 :
hotaruさん 古典   読み終わった 

おぞましい情景描写と、二転三転する下人の心理描写。このふたつの描写と、その絡まりあいがあまりに絶妙で、妙な現実感を醸し出している。

たった10分程度でさらりと読めてしまう作品に、ここまでのものを盛り込める芥川龍之介の手腕は、やはりすごいと感嘆せずにはいられない。

天変地異続きで、荒れ果てた京の都の羅生門。ここには、引き取り手のない死体が多数放置されている。この門下で雨宿りをする下人。主人に解雇されたばかりの彼に、行き場などない。いっそ、盗賊にでもなろうかとも思うが、そんな勇気も出ない。そのうち、雨足が強くなり、門の軒下では雨を凌げなくなった彼は、死体だらけの上階に寝床を求めようとするけど…。

無情にも打ちつける雨。
追い詰められている下人。
醜く腐り、泥のようになった無数の死体。
猿のような老婆。
彼女がしている行為。
下人と老婆の問答。

そういった情景描写の中に、それらを受けて刻一刻と変化する下男の内面描写が挟まれる。

最終的には吹っ切れたように悪に手を染める下男の姿は、その追い詰められている途中経過の情景・心理描写の見事さゆえに、責めるよりも、自分も同じ立場になればそうなんだろうな、と思わずにはいられない。

初めて読んだのは、中学の時の国語の教科書でした。
けれど、大人になって社会を知った今だからこそ、善悪なんて単純明快なものではなく、状況を理解してしまう、という複雑さで読むことができたと感じる作品でした。

レビュー投稿日
2018年6月10日
読了日
2018年6月10日
本棚登録日
2018年6月10日
8
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