日中韓はひとつになれない (角川oneテーマ21 A 91)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング (2008年12月10日発売)
2.50
  • (1)
  • (1)
  • (8)
  • (4)
  • (4)
本棚登録 : 45
感想 : 9
3

中国・韓国は性善説の国であり、日本だけでなく中国・韓国もそのことを理解していないために、東アジアの相互理解が進展しないということを説いた本です。

性善説は、道徳的に優位に立つ者が社会をリードするべきだという「ベタ」な立場を意味しています。著者によれば、中国の民衆は性善説的なメンタリティに基づいて行動へと駆り立てられがちなのに対して、政府はそれを抑える「鍋の蓋」の役割を果たしていると考えます。一方韓国は、上も下も性善説に支配されているため、政府がつねに不安定な状況に置かれがちだと論じています。

一方日本は、少し前までは「ベタ」な価値にコミットすることを忌避して「メタ」な立場を取る国民性を持っていました。これは、日本国憲法という中立的な「手続き的民主主義」によって実現されたものです。ところが、最近になって日本は急速に「ベタ」な価値へのコミットを強め、「東アジア化」していると論じています。

おもしろかったのは、地域史の研究者としての立場から、左右両翼の東アジア観を批判している箇所です。著者は、国家のヘゲモニーという考えに捕らわれている「右翼」を批判するとともに、返す刀で反日米同盟の口実としてアジアとの友好を説く「左翼」や、西欧の出来合いのポストコロニアル理論を当てはめようとする学者を批判します。東アジア全体に通用するような「ベタ」な価値を求める「未来志向」を絶対化することは危険だという主張も、よく納得できるものでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・地域・文化
感想投稿日 : 2014年2月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年2月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする