歴史入門 (講談社現代新書 38)

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  • 講談社 (1965年4月1日発売)
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タイトルは「歴史入門」となっていますが、歴史学ではなく歴史認識をめぐる哲学的問題を主題的にあつかっている入門書です。

C・ベッカーという歴史家は、「歴史的事実は歴史家が作るまでは存在しない」と主張しました。それでは、われわれはどのようにして歴史を客観的に把握することができるのでしょうか。著者は、歴史は現在の観点から歴史家の問題意識にもとづいて把握されたものであるとしても、そのことからただちに歴史認識は主観的なものにすぎないと結論づけることはできないと主張します。歴史認識は認識主体の視点からとらえられたものにすぎないという議論は、哲学的認識論の舞台のうえで構成された主張であり、そうした指摘は他の諸科学に対しても同様におこなうことが可能です。それゆえ、歴史学も自然科学など他の諸科学とおなじ程度には、歴史家が歴史を主観的にとらえているか、それとも客観的にとらえているかを判別することは可能だと論じられます。

つづいて著者は、新カント派やディルタイなどの歴史哲学者が取り組んだ、自然科学と歴史学との性格のちがいについて考察をおこなっています。これらの哲学者たちによれば、自然科学がくり返し生じる現象から一定の法則を定立する「法則定立学」なのに対して、歴史学は個別的なものを記述するだけの「個別記述学」だとされます。しかし著者は、こうした性格づけは観念論的な空回りにすぎず、歴史学も個別的な事実の連鎖を支配するゆるやかな法則性を、「理由」の関係でつなぐことによって説明する学問だと主張しています。

歴史哲学はかつてドイツを中心にさかんに論じられてきましたが、著者はそれらの議論が陥りがちな観念論を慎重に回避し、歴史を記述する言語に注目する英米系の歴史哲学の議論を取り入れながら、歴史認識についての基本的な問題をわかりやすく解説しています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・地域・文化
感想投稿日 : 2020年4月25日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年4月25日

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