父親とは何か―その意味とあり方 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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3

「母性社会」と特徴づけられることのある日本社会のなかでの「父」の位置づけと役割を、精神分析の立場から論じた本です。

フロイトのエディプス・コンプレックスやラカンのシェーマLが示すように、西洋の精神分析では「父」に、母子の一体化を切断し、社会的秩序を導入する役割を与えてきました。また社会学者のパーソンズも、アメリカ社会の秩序を形成している「父親」の社会的役割について考察をおこなっています。しかし日本では、そうした「父」の影は薄く、むしろ「母」によって「立てられる」ことで「父」は家族のなかに居場所をもつことができるにすぎません。

ただし著者は、こうした日本的な家族や社会のあり方を指摘することで、フロイトやラカンの理論を否定しようとしているわけではありません。むしろ精神分析では、「ファルス」は現実の父親とは一致しないという観点に立って、日本社会における母親が、精神分析の「父」の役割を肩代わりしていることを明らかにしようとしています。このような母親は「ファルスをつけた母」と呼ばれます。そして、「子」はこのような「母」によって「立てられる」ことで、社会に参加する心理的機動力を獲得しているという考察が展開されます。

精神分析を「日本化」するのではなく、精神分析の枠組みのなかで特殊日本的な偏差を測定するという議論の進め方がなされており、納得させられるところが多かったように思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学・精神医学
感想投稿日 : 2015年6月4日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年6月4日

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