聖徳太子の仏教理解や十七条の憲法の思想について、日本倫理思想史の観点から考察をおこなっている本です。
本書では、「〈もの〉神」と「〈たま〉神」ということばが登場します。〈もの〉神とは事物や事象の実なる在りようの形象、〈たま〉神とは〈もの〉神を祀るひとの霊魂として現出したものとされ、著者の他の著作でも用いられているものです。著者は、日本思想史の根底にこの二つの神のありかたが見られると考えており、仏教の日本的変容においても新しい〈たま〉神として解釈がなされたという議論が提出されています。
著者の日本思想史研究の枠組みが前提になっているので、その議論になじんでいる読者にとっては飛鳥時代の仏教受容について学ぶことができるのではないかと思います。ただ個人的には、著者の〈もの〉神と〈たま〉神にかんする議論の枠組みがやや本質主義に感じてしまいました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2020年7月30日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2020年7月30日
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