鴨長明の生涯と、『方丈記』をはじめとするその作品について解説している評伝です。
長明にかんしては、日野に庵を結び『方丈記』を記した隠者文学の代表者としての側面が広く知られていますが、本書では歌人として活躍した長明のすがたをていねいにえがいており、興味深く読みました。
著者は長明を、「潔癖さと不器用さによって、巧みな処世のできない男であった」として、風雅の道で名利を求めることもできず、四十代の半ばで思いもかけず運がめぐってくるもけっきょく下鴨社の人事異動において敗北し、方丈の庵に籠居することになった生涯をたどっています。
また著者は、『方丈記』以後に『無明抄』が書かれたという見方をとっており、晩年の長明が歌壇への郷愁を断ち切れなかったことがそこにうかがえるとしていますが、ことさらに批判的な言辞を記すことはせず、等身大の長明をそのまま読者の前に提出しようとする著者のスタンスを見て取ることができるように感じました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学研究・批評
- 感想投稿日 : 2020年4月17日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2020年4月17日
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