芥川龍之介が友人の残した暗号の謎を解くという設定の、歴史ミステリ小説です。
東京美術倶楽部の売立会に出かけた龍之介は、一校で同期の原田宗助という男が、伊達家三代綱宗の描いた掛け軸を高値でせり落とすのを目撃します。その後、会場を出た龍之介は、原田から掛け軸にまつわる奇妙な話を聞かされることになります。
かつて「伊達騒動」と呼ばれる事件があり、伊達綱宗は不品行を理由に引退させられ、幕府は幼少の綱村を藩主に、伊達兵部と原田甲斐をその後見人に就かせるも、兵部と甲斐の2人は、本家に対する反逆の罪で処分されることになりました。そして、原田甲斐の子孫であり、彼がせり落とした掛け軸には、この事件の真相を記した暗号が隠されているのだというのです。龍之介は原田の依頼を受けて、この暗号の謎に取り組むことになります。
探偵小説家の江戸川乱歩こと平井太郎の言葉を手がかりに、龍之介は暗号の謎に迫っていきますが、そんな中で原田が何者かに殺害されてしまうという事件が起こります。彼の残したメッセージには、ヘキサグラム(六芒星)と呼ばれるユダヤ民族の紋章が記されていました。龍之介は、英字新聞記者を務めるユダヤ人のアイザック・コーガンからヘキサグラムについての話を聞き出します。やがて龍之介は、綱宗と後西院天皇が従兄弟の関係にあることに気づき、そこから事件の背景にある謎を突き止めます。
伊達事件という史実に基づく謎を中心にして、日本人とユダヤ人の同祖説を物語に組み込み、主人公に若き芥川龍之介を起用するなど、ケレン味の強さが印象的ですが、歴史ミステリというジャンルのおもしろさに浸ることができる作品だと思います。
- 感想投稿日 : 2017年3月22日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年3月22日
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