著者は、「ジェンダー・センシティヴ」という立場に立って、社会の中に現に存在しているジェンダーの差異の「実地検分」をおこなっています。現実のジェンダーの差異は「イメージとしての男女の違い」であることを明らかにすることで、最終的には「男女の違い」というイメージを解体に導こうとしています。
前半は、ジェンダーを男女の脳の解剖学的ないし生理学的な差異に還元しようとする疑似科学への批判が展開されます。「ジェンダーはセックスの上位概念であり、性差が決定づけられるうえで何が本質的で何が構成的であるか、という区別は簡単にはできない」というのが、著者の立場です。
後半では、ジェンダー間での欲望の違いが、「所有原理」と「関係原理」という概念を用いて整理されることになります。男の「所有原理」はひたすらファルス的享楽をめざして突き進みます。著者はこうした欲望のあり方を、象徴界において対象を視覚化・言語化・概念化して意のままに操作することへの欲望として理解しています。他方、女の「関係原理」は、対象を観念として所有するのではなく、想像界における身体を受け入れたうえで、身体を包んで織りなされる関係においてみずからの欲望を発見するという特徴をもっていると論じられます。さらに、男性の「オタク」と女性の「腐女子」に見られるセクシュアリティの差異を具体例にとりあげながら、「所有原理」と「関係原理」の差異を具体的に解説しています。
単なる印象論ではないのかという気もしますが、それなりにおもしろく読みました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
心理学・精神医学
- 感想投稿日 : 2014年3月13日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年3月13日
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