短編11編を収録しています。
表題作の「夢みる少年の昼と夜」は、ギリシア神話に興味を示す少年を主人公にした物語で、感受性の強い少年の不安定な心をていねいにえがきとろうとしています。
おなじく強い印象をのこす少年が登場する「死者の馭者」や、画家の父をもつ少女を主人公とする「鏡の中の少女」は、すこし神秘的な内容を含んでおり、ロマン派の小説の影響が感じられます。
一方「鬼」は、『今昔物語』から想を得てつくられた作品です。人間の心のありようを冷徹に見つめようとする著者のまなざしが印象的です。
兄の自殺した理由を知る女性をえがいた「秋の嘆き」や、精神に異常をきたす医者の妻をえがいた「世界の終り」は、題材にどうしても古さを感じてしまいますが、整った短編小説にしあげられていて、著者のストーリー・テラーとしての卓越した手腕にあらためて目を開かされました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説・エッセイ
- 感想投稿日 : 2021年8月30日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2021年8月30日
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