売れない小説家の古橋健二は、雑誌『旅と歴史』の編集者である佐藤久夫と取材旅行のため、上野発青森行きの旧交十和田3号に乗っていました。ところがとつぜん、ライフルを手にした少年が、列車を停止させます。東北の一寒村が「吉里吉里国」として日本からの独立を宣言し、古橋らは外国人として検問所へ連れて行かれることになったのです。こうして、偶然にも吉里吉里国独立運動の渦中に投げ出されることになった古橋は、そこで次々に驚くべき体験をすることになります。
筒井康隆の作品のようなパロディやブラック・ユーモアに、宗田理の作品のような痛快無比なストーリー、若干イデオロギー色が強めですが、これも冗談でくるんでいるのでけっして鬱陶しいとは感じません。
夏目漱石の『坊っちゃん』や川端康成の『雪国』、小林秀雄の『モオツァルト』の「吉里吉里語」訳や、ユーイチ小松という人物の手になる『吉里吉里語四時間・吉日、日吉辞典つき』など、「ズーズー弁」と蔑まれてきた東北の方言が立派な国語になるというパロディ設定で、徹底的に遊びのめしています。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説・エッセイ
- 感想投稿日 : 2015年9月20日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年9月20日
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