ケナリも花、サクラも花 (新潮文庫)

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本棚登録 : 216
レビュー : 26
著者 :
キじばと。さん 日本の小説・エッセイ   読み終わった 

20歳をすぎてはじめてみずからのうちに在日コリアンの血が流れていることを知った著者が、一年間にわたってソウルに留学したときの思い出を振り返り、日本と韓国について感じたことを率直に語っている本です。

著者ならではの行動力で、日韓のあいだの壁にぶつかり、傷つきながら前に進んでいく姿勢は心を打ちます。ただ、韓国という国に対して「なんかやばそうな感じ」をいだいてしまう日本人に容赦がない点には、すこしだけ引っかかりをおぼえてしまいます。というのは、このような感じをいだいているひとの多くは、そのことにみずからもある種のうしろめたさを感じており、もうすこし複雑な問題をはらんでいるように思うからです。著者のいうことは正論にちがいないと思いつつも、そうしたごく普通の日本人が、事なかれ主義的に韓国人に迎合しながらそんな自分自身にどこか居心地の悪さを感じていることを、著者はあまりにも簡単に切り捨ててしまっているようにも感じます。

もちろん、このようなぐるぐる回りつづける思いは、著者が「僑胞か」「僑胞じゃないのか」という問いに直面して考えをめぐらせていることとパラレルであり、そうした終わりのない思考の内に読者をさそい込む触媒としての役割を果たしているのは、本書のもつ魅力の一つにかぞえられるべきでしょう。

レビュー投稿日
2019年8月23日
読了日
-
本棚登録日
2019年8月23日
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