「負けた」教の信者たち - ニート・ひきこもり社会論 (中公新書ラクレ 174)

著者 :
  • 中央公論新社 (2005年4月10日発売)
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感想 : 13
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「ニート」や「ひきこもり」をテーマにした、著者の論壇時評を収めた本です。巻末には玄田有史との対談が収録されています。

時評なので、報道された事件に基づく議論が多く、著者自身の思想がストレートに語られているわけではないので、少し隔靴掻痒の感があります。

とくにおもしろいと感じたのは、「ひきこもり」論の世代間格差を論じた文章です。全共闘世代は、左右の政治的文脈に引きつけて「ひきこもり」を語る傾向が強く、シニシズムとコミットメントの分裂を生きた新人類世代は、非政治的な観点から問題を語る傾向があると著者は指摘します。著者自身も、「ひきこもり」を政治的な価値の問題としてではなく社会問題としてとらえ、権利上は「ひきこもり」を擁護しつつ、事実としては「ひきこもり」を治療するという道を選ぶと述べています。ところが、それより下の団塊ジュニア世代になると、「ひきこもり」の当事者の語りが増えると著者は述べています。そしてそれは、「先行世代が押しつけてくる物語的枠組みに、個人の語り口で対抗しようという試みにも見える」という感想が述べられています。

直接の関係はないのですが、オタクの世代論にも、同じような傾向があるのではないかという気がします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学・精神医学
感想投稿日 : 2014年5月7日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年5月7日

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