古代から近代に至るまでの日本倫理思想史を概観している本です。なお、2017年現在、増補版が刊行されているようです。
序論の「対象と方法」では、「現存」という言葉を基軸にして、やや生硬な実存哲学的考察が展開されています。それにつづく本論では、古代は「神」、中古から中世にかけては「仏法」、近世が「点」、そして近代は「文明」というテーマを軸にして、それぞれの時代の倫理思想史を解説しています。
主として折口信夫の日本神話に関する議論を手がかりとしながら、〈もの〉神と〈たま〉神という対概念をめぐって、日本の思想史を貫く原理を考察しようとしており、それなりに興味深く読みました。ただ、序論では著者独自の日本倫理思想史の見方がやや性急に語られているのに対し、本論では教科書的な叙述に終始していて、バランスの悪さを感じてしまいます。『日本の思想とは何か―現存の倫理学』(筑摩選書)では、著者自身の日本倫理思想史の全体像がいっそう明瞭に示されており、本書以上におもしろく読めるのではないかと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2017年11月26日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年11月26日
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