戦時中、フィリピンに派兵された著者の山本七平が、自身の戦争体験に基づいて、朝日新聞の記者・本多勝一の『中国の旅』(朝日文庫)で報告されている「南京百人斬り」の嘘を明らかにした本です。
戦争中、「戦意発揚記事」として発表され、国民を欺いたのと同じ「虚報」が、戦後になって日本帝国主義の残虐性の証拠として、またしても国民を欺いていることに、戦中・戦後を通じて変わることのない、日本社会の病弊が浮き彫りにされています。
横井正一のような人が、戦後何十年間もたった一人で戦争を続けることができたのは、『戦陣訓』が骨の髄まで叩き込まれていたからだ、と説明されることがあります。これに対して著者は、ジャングルから出て降伏することがどれほど難しいかという、より形而下的な問題を指摘しています。こうしたこともなかなか戦争体験のない世代には分からないものになってしまっているので、興味深く読みました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2014年2月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年2月3日
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