漢字語源の筋ちがい (文春文庫 た 38-8)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年6月9日発売)
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感想 : 2
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「片頬三年」というタイトルの記事で、「四民平等は四民こぞって百姓町人になったのではなく、その気がまえにおいて、みな武士になった。特に女がなった、とわたしは思う」と著者は述べているのですが、政治的な含意を読みとることを読者にうながすような文章だという印象を受けてしまいました。

近代以降の日本で「武士道」が国民道徳にまで押しあげられたことへの批判が、主として左派の論客から提出されていますが、そういったコンテクストのなかに著者の発言を引っ張り込むとどのような効果を持つだろうか、といったことも考えさせられました。

諸田玲子の時代小説に「連絡」ということばが用いられていることをとりあげたエッセイもおもしろかったのですが、諸田も美人だったばかりに、怒りっぽい御隠居の目に止まって叱られる羽目になったのは不運なことでした。「楚々たる美人、とはこういう人のためにあることばではないかと思った」と著者は述べているのですが、たおやかでありつつ芯の強そうな女性が著者の好みなのでしょうか。なんとなく、腑に落ちるような気がしたのですが、上で記した政治向きの話に引っ張られてしまったのかと連想が働きます。

いつもながらこの「お言葉ですが…」シリーズは勉強になるのですが、どうも今回は雑念が入って余計なことばかり思い浮かんでしまいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年8月17日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年8月17日

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