子どもは判ってくれない (文春文庫)

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本棚登録 : 814
レビュー : 83
著者 :
キじばと。さん その他の文庫   読み終わった 

著者のウェブ・サイトに掲載された時評的なエッセイを収録しています。

「この本の想定されている読者は「若者たち」である。しかし、私自身は「若者」ではないから、「若者たち」が私の意見に賛同するということはあまりきたいしていない(ぜんぜん期待していないと言ってもよい)。しかし、それにもかかわらず、私は「若者たち」から「合意することの大切さについての合意」だけは何とか取り付けたいと思っている」。「たいへんに長いまえがき」にはこのように書かれています。

これは、価値観の異なる複数の参加者どうしが合意の形成をめざす「討議空間」への参与を呼びかけている文章として読めるように思います。ただし、この討議空間の普遍的な原理はア・プリオリに定まってるわけではありません。他者との粘り強い交渉と対話をくぐり抜けることによって、初めて討議空間に共に参与するということが可能になるという発想が、ここには見られます。討議空間に他者と共に参与する人に要求されているのは、「正しい意見を述べること」ではなく、「言葉が聞き届けられること」に対する気遣いだというのが、著者の立場なのだろうと思います。

著者は、「論理的な人」と「理屈っぽい人」とは違うと言い、「自分の考え方」を停止して「他人の考え方」に想像的に同調することのできる能力が「論理性」だと述べています。そこで求められているのは、そのつどの問題に対して、それにもっともふさわしいアプローチを探し出す「思考の自由」です。そしておそらく、他者と共に討議空間に参与することを粘り強く求めていく態度にとって必要なのも、こうした「思考の自由」なのではないかという気がします。

レビュー投稿日
2015年5月26日
読了日
-
本棚登録日
2015年5月26日
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