「知識経営」(ナレッジ・マネジメント)を、従来よりもいっそう包括的な視点から捉えなおそうとする本です。
90年代半ばから欧米で関心が高まった「知識経営」は、個人の知識や企業の知識資産を組織的に集結し、共有することで、効率を高めたり価値を生み出すこと、そして、そのための組織作りや技術の活用をおこなうことを意味します。しかし著者たちは、従来の知識経営が、私たちの「頭の中にある」知識よりも、データベースなどに蓄えられた情報が対象となっており、それを応用する「知識管理」の段階にとどまっていたと述べます。
知識経営は、知識ワーカーたちの組織的行為を通じて、単に知識を活用するだけでなく、新しい価値を創出するような経営として捉えられる必要があります。本書ではそうした知識の活用による価値創出のプロセスを説明するために「SECIプロセス」というモデルが示されています。これは、知識の「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「結合化」(Combination)、「内面化」(Internalization)から成り、知識ワーカーたちの体験が共同化されることで言葉へともたらされ、組織の「知」にまで成長し、それが個々人に内面化されることで、それに関わった人びとがひと回り大きく成長する……というプロセスを表わしています。
さらに著者たちは、こうした知識による価値創出がおこなわれる「場」についての理論への展望をおこなっています。そこでは、アフォーダンスや現象学、M・ポランニーの暗黙知の理論や、西田幾多郎の場所の哲学などとのつながりが示唆されていて、おもしろそうに思えます。ただ、その内容は十分に展開されておらず、もどかしく感じました。
- 感想投稿日 : 2014年9月22日
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- 本棚登録日 : 2014年9月22日
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