現象学は思考の原理である (ちくま新書)

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レビュー : 23
著者 :
キじばと。さん 哲学・思想   読み終わった 

小浜逸郎・佐藤幹夫主催の「人間学アカデミー」での講義に基づいて書かれた本です。フッサールがめざしていたのは「確信成立の条件」を解明することであり、「還元」はそのための方法にほかならないという著者の年来の主張に基づいて、フッサールの現象学の内容が解説されるとともに、現象学批判への反論が試みられています。

著者は、現代の言語哲学やフランス哲学から投げかけられている現象学批判に対して、現象学の立場を擁護する議論を展開しています。「言語論的転回」以後の哲学は、言語にまつわるさまざまな問題の存在を指摘しているものの、いずれもわれわれが言語的表現へと向かっていくことの根拠になっている実存的な本質に目を向けようとしないと著者はいいます。現代哲学の言語に関するさまざまな議論は、言語の一般的な表現(一般言語表象)だけを見ていることから生じた問題に足をすくわれており、現象学的な観点に立つことではじめて、言語表現を介して発話者の「言わんとすること」をめがけるような信憑構造を解明することができると著者は主張します。

さらに、著者自身の欲望論の立場から、とくに身体をめぐる問題に対する考え方の方向性が示されます。われわれはみずからの欲望のあり方を、言語を通じて深く「了解」します。また欲望のあり方は、主体を取り巻く社会的関係の中で、そのエロス的な布置をたえず組みなおしていくような性格をもっていることが論じられています。

このように、著者によれば現象学とは、われわれの欲望のあり方とその変容を深く了解するための方法にほかなりません。そしてこの方法は、人びとのあいだで意見の相違が生じたときに共通了解をさぐっていくための原理であり、このような努力を通じてはじめて、ひとはイデオロギーの相違を乗り越えることができると主張しています。

レビュー投稿日
2017年8月29日
読了日
-
本棚登録日
2015年4月2日
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