第1章では、敗戦後の占領政策によって日本人の歴史観が歪められてしまったことが説明されています。著者は、GHQに共産主義者が多く入り込んでいたことを指摘して、とくに冷戦がはじまる1948年頃までは、彼らによる社会主義的政策が推し進められていったと述べています。こうした状況の中で、国民の間にナイーヴな「青い山脈」的理想主義が広まっていくことになりました。やがて左翼的理想主義は崩壊しますが、多くの国民はそれに代わる国家観を持っていなかったため、日本人の精神に「真面目さの崩壊」が起こったと著者は主張します。
第2章は、日本が日中戦争・太平洋戦争へと突き進んでいった経緯を説明しています。幣原喜重郎の「日支友好」の立場は、諸外国の政治的リアリズムを見落としており、このことが日本を危機に追いやったというのが著者の主張です。
第3章は天皇についての解説が、第4章は日本文明論が、それぞれ展開されています。
新書ということもあり、リソースがきちんと示されているわけではないのですが、本書の議論は、戦後60年以上経ってようやく公開され始めた各国政府の史料に基づいて展開されているとのことで、いろいろ興味深いところがありました。ただ個人的には、文明の60年周期説というのは、なかなかその真偽を判じがたい仮説にとどまるのではないかと感じます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地域・文化
- 感想投稿日 : 2014年2月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年2月27日
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