
『ドナドナ』のイディッシュ語の歌詞を紹介し、その背後にホロコーストないしポグロムの影が差し込んでいることを指摘します。また、ジャニス・イアンのプロテスト・ソングをとりあげ、彼女が生きたアメリカ社会のなかで黒人が置かれていた状況などとのつながりを読み解いていきます。
一方で著者は、『ドナドナ』の日本語の歌詞にはそうした内容が十分にくみつくされていないことを問題視しながらも、それゆえに意識的ないし無意識的な「検閲」をくぐり抜けて現代の日本の子どもたちにこの歌が届けられたことに、希望を見ようとしています。ここには、アドルノの研究者でもある著者の「投壜通信」に関する解釈が見られるように思います。
最後は、友部正人と中島みゆきという二人の日本人歌手がとりあげられ、あさま山荘事件などの時代背景を参照しつつ、彼らの歌から届くメッセージに耳を傾けようとしています。
「ポップミュージックで社会科」というタイトルから期待したほどにはキャッチーな中身ではなかったのですが、コンパクトな本でおもしろく読める内容でした。
- レビュー投稿日
- 2018年7月24日
- 読了日
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- 本棚登録日
- 2018年7月24日
『理想の教室 ポップミュージックで社会科』のレビューへのコメント
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