文化記号学の可能性 増補完全版

  • 夏目書房 (1993年11月1日発売)
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本書の解説にあたる「記号学の現在」という章で、著者の高弟の一人である立川健二は、本書を「丸山圭三郎の第一の主著『ソシュールの思想』(1983年)と第二の主著『文化のフェティシズム』(1984年)とをつなぐ、いわば中間的な書物である」と述べています。

第一部は、丸山の論考6編を収めており、うち1編は三浦雅士のインタビューに著者がこたえたものです。これらの論考を通じて、ソシュール言語学の圏域を越えて、人間が言語的存在であるだけでなく身体的存在であるという視点がはっきりと打ち出されています。

第二部は、丸山×岸田秀、丸山×柄谷行人、丸山×竹内芳郎の対談を収録しています。岸田と著者との対談では、言語学と精神分析という異なる分野の研究者でありながら、多くの点で共通する思想をいだいていることが語られています。柄谷との対談については、やはり立川によれば「その後この二人の思想家の関係は、むしろ冷たいものになっていく。その意味でも、最初で最後の出会いの記録であるこの対談は、貴重な資料であると言えよう」と述べられています。竹内との対談では、彼が刊行した『文化の理論のために―文化記号学への道』(1981年、岩波書店)がテーマになっています。とくに丸山は『ソシュールの思想』のなかで竹内の言語論を批判しており、両者の白熱した議論が展開されています。

岸田との対談でも、竹内との対談でも、著者は言語の発生論については確定的なことはいえないとしながらも自由な想像を語っていますが、むしろ問題とするべきはアルチュセールやフーコーのいう意味でのエピステーメの地平で言語論を理解することであり、この点では柄谷のアプローチが正しいのではないかと考えます。

第三部は、立川による解説と読書案内からなっており、丸山言語哲学の解説と読書案内が含まれています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言語
感想投稿日 : 2019年2月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年2月23日

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