月のしずく (文春文庫)

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本棚登録 : 1500
レビュー : 192
著者 :
そらさん  未設定  読み終わった 

【月のしずくのひかる場所】

父が浅田次郎を読んでいたと聞いて僕も読んでみようと思った。子どもの頃、流行本ばかり追いかけていた僕に父はこういった事があった。

読んでそれなりに感動して、それで終わりみたいな本は読むな。十年考えられるような本を読め。

今、思うとなかなかいいことを言っているように思う。宇宙学から哲学、詩と歌、子どもの頃の僕が言うに面白くない本ばかり読んでいた父が浅田次郎を読んでいるイメージはなかった。つまり僕の中での浅田次郎のイメージは、それなりに感動してそれで終わりみたいな本を書いている作家だったので、父が嫌いな分野だろうと思っていたのだ。まぁ、こうやって書けば大体読了後の感想は絞られると思うが。結果は打ち破られる事になる。

月が好きな理由はなにかと聞かれたら、未完成のところ、自分だけじゃ光れないところ、そして一日中会えるところ。私達にとても近い、そんなふうに感じるからだ。月のしずくがひかる場所。それは、わざわざ台座があるような王族お誂え向きな場所じゃない。もっと汚くて普通で平凡でそして人の目の中の端でしか光らないような場所だってそう思う。

美しさって完成してたり、整っていたり、綺麗だったりすることだけじゃないと思う。夕暮れあの一瞬だけ光った砂浜のガラスだって、立派な宝物だから。この本の物語は人の情と愛、そして業を兼ね合わせた、人間浪漫。

父が浅田次郎作品になにを思ったのかもう分からないけれど、でもなんとなく父の心の奥のやわらかいところが乾かずにいたのは月のしずくで濡れていたからかもしれないって思った。

レビュー投稿日
2015年9月22日
読了日
2015年9月22日
本棚登録日
2015年9月22日
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