雪と珊瑚と

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本棚登録 : 1878
レビュー : 373
著者 :
まろんさん な行の作家   読み終わった 

くららさんが、とてつもなく素敵だ。

私が崇拝する三大おばあちゃんの一人、『西の魔女が死んだ』の
まいのおばあちゃんを彷彿とさせるような、しなやかな強さと温かさ♪
(おばあちゃんと呼ぶにはまだまだお若いので、
崇拝するおばあちゃん軍団には加えられないのが残念だけれど)

母によるネグレクトで、帰宅しても食べるものもなく、ひとりぼっちで調味料を舐め
給食でなんとか生き永らえ、21歳にしてシングルマザーとなった珊瑚の

愛情こめた家庭料理がひとかけらも入ったことのない淋しい胃袋を
ホクホクのおかずケーキや大根の茹で汁のスープで温かく満たし、
疲れた人をおなかの底から支えるお惣菜の店を出す、という
飢えを味わい続けた珊瑚ならではの夢を抱くきっかけを作り、
人見知りの真っ只中の雪ちゃんを預かりつつ、その夢を後押しする。。。

そんなくららさんや心ある仲間に支えられながら、
カフェで出すメニューを選び、ネーミングに頭を悩ませる珊瑚に
「ほらほら、アトピーでも食べられる、あの長芋のメロンパンもどきも入れないと!」だの
「『エビとブロッコリ』、『カニとブロッコリ』は、あんまりだよ!
もちょっと飾り気があっても。。。」だのうるさく語りかけ、
すっかりスタッフになった気分でメニュー作りに参加している自分にハッとしたりして。

。。。というくらい感情移入して読み耽っていたので
珊瑚がネグレクトを受けて、食事を満足にとることすらできなかったことも
人の好意を利用するような振舞いを薄汚いと感じ、何につけても遠慮がちであることも
彼女が抱える事情を何ひとつ知らないのに、
「私はあなたが嫌いです。」とわざわざ手紙を送りつけ
「周りから少しずつ親切と同情を掠め取る浅ましい人」と決めつけ
「中身がなにもない、不愉快だ、あなたの生き方が鼻についてたまらない」
と、悪意を投げつける美知恵には、珍しく怒りがこみ上げてしまった。。。

そんな一方的な手紙にまで怒りより先に納得と反省を抱いてしまう珊瑚に呼びかけたい。

人の胃袋も心も温めるお店を出せたのは、
さみしい胃袋と心に悩んだあなたへの、紛れもない「お計らい」だよ。
素晴らしい人たちがあなたの周りに自然に集まって支えてくれるのは
同情でも施しでも哀れみでもなく、
あなたが不器用だけど真摯に生きようとしているからだよ。
自分の観点に凝り固まって勝手にあなたを格付けして
投げつけてくる毒を、唯々諾々として飲み込まなくていいんだよ。

母の愛を得られずに大きなうろを抱え、
外についた内臓に傷を負いながら生きていく糧を得ようとしていた
さみしい木のようだった珊瑚は
お腹の中に雪というあたたかい命を宿すことで、
空っぽだった内側と傷ついてボロボロになった外側をくるっとひっくり返して
「おいちいねえ、ああ、ちゃーちぇねえ」と、雪と一緒に幸せをかみしめられる
おかあさん、という人間になれたんだよ。

レビュー投稿日
2012年9月11日
読了日
2012年9月11日
本棚登録日
2012年9月11日
16
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『雪と珊瑚と』のレビューへのコメント

takanatsuさん (2012年9月12日)

「素晴らしい人たちがあなたの周りに自然に集まって支えてくれるのは
同情でも施しでも哀れみでもなく、
あなたが不器用だけど真摯に生きようとしているからだよ。」
本当にその通りだと思います!
美知恵さんのような人のそばにはきっと集まってこないでしょう。
きっとそれが全てを物語っているのですよね。

まろんさん (2012年9月12日)

takanatsuさんの、心を込めたレビューを読んで
ぜったいに読まなきゃ!と思って出逢えた本です。
くららさんみたいな芯のある優しさ、穏やかさを備えたひとになりたいと思いつつ
自分の好悪を見境なく投げつけてくる美知恵さんにカッカしてしまって
ああ、私はまだまだ修行が足りないなぁ、と思う今日このごろ。

図書館から借りましたが、どうしても手元に置きたいので
ちゃんと買ってきます!
すばらしい本を紹介してくださって、ありがとうございました(*^_^*)

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