聞いてほしい誰かに、意を決して悩みを打ち明けた時
「なぁんだ、そんなことで悩んでたわけ?」という言葉で
済まされてしまうのは、かなり辛い。
打ち明けた悩みより遥かに大きなダメージを受けてしまうことだってあります。
数少ない女性消防士として働き始め、友達とすれ違う女の子。
娘が入園した幼稚園で、ママ友デビューに緊張する若い母親。
家庭での鬱憤を、学校で女王然と振舞うことでしか晴らせない小学生。
職場での女同士の小競り合いにうんざりし、家をジャングル化してしまう女性。
罪の意識に縛られ、小さな文房具店で囚われ人のように生きる女店主。
仲良しグループに居続けるため、柄にもないキャラ作りに追われる中学生。
女友達に裏切られ、友情が信じられなくなって男に逃げ込もうとする女性。
閉じられた小さな世界で彼女たちが抱える悩みは
女性なら誰でも、これまでの人生の中で通過してきたものだったり
たぶんこれから味わうことになるであろうものだったりして、胸がしくしく痛みます。
でも、ひょいとさりげなく手を差し伸べてくれる人や
肩の力をぬいて、ふと明日を思う余裕が生まれる瞬間が
ちゃんと用意されているのが、とてもうれしい。
7つの短編それぞれの人物相関図が、はしっこでちょこっと繋がっているかのような
登場人物たちの奥ゆかしい繋がり具合も素敵。
ずっと児童文学を書いてこられた魚住直子さんらしく
ひとつひとつの言葉が、読者に誤解なくまっすぐ届くよう
本当に丁寧に綴られていて、文章の清々しさにも心打たれる1冊です。
- 感想投稿日 : 2013年3月11日
- 読了日 : 2013年3月8日
- 本棚登録日 : 2013年3月11日
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