最後の頁を閉じた時、
「ああ!できることならこの本には中学生の頃に出会って
未成年の熱ともどかしさを噛みしめながら読みたかったなぁ!
そしたら大人になって読み返したときの感動もひとしおだったのに!」
なんて、ないものねだりの妄想をふくらませてしまいました。
・・・というわけで、もちろん大人になってから読んでも素晴らしいけれど
夏休み真っ只中のティーンエイジャーのブクログ仲間さんたちに
「十代でこの本を読める幸運を逃さないで!」と、ぜひおすすめしたい一冊です。
たぶん、いちばんわかりあえる相手、
誰よりも自分を知ってほしいひとに
「私を知らないで」とつぶやくしかない、キヨコのせつなさ。
「普通に生きられる場所」へと彼女を引っ張り上げるべく、手を差し伸べたくても
法律や世間の常識に阻まれ、歯噛みするしかない、未成年のシンペーと高野。
このせつなさ、もどかしさを、リアルタイムで共感して読めるなんて
なんとまあ、うらやましいこと。
中学生にして既に転校のエキスパートを自認し、万事そつがないシンペー。
シンペーが緻密な計算を組み立てた上でクラスに溶け込む「浸透型転校生」だとしたら
後から転入してくる高野は、計算の「け」の字も脳内に存在しないような
あっけらかんとした「飛び込み型転校生」。
彼らが、「貧乏で変わり者だ」と、クラスの異物として遠巻きにされているキヨコの
休日の行動を追跡するところから、物語は鮮やかに展開し始めます。
いつ来るかわからない終わりを見据えながらも
貧乏暮らしの中、創意工夫を重ねて貯めたお金で
末永く使える質の良いバッグや高価な箒を買い
一生ものの「ミーレの掃除機」に憧れる。。。
「普通に生きる」という、キヨコのたったひとつの望みを叶えるために
冷静さも緻密さもかなぐり捨てて、みっともなく走り回る男の子たちが
どうしようもなく愛おしい。
そして、クラスに馴染むため、ボスのミータンの取り巻きの中から
好きでもないのに彼女として選んだアヤの労作が、めぐりめぐって
キヨコを救うにあたり、シンペーには如何ともしがたかった親の心を動かすくだりや
恋愛すら戦術としてスマートに利用していたつもりのシンペーが
遅まきながら初めてほんとうの恋を知ったときの恋の神様からのしっぺ返しは
大人になったからこそ、ほろ苦く、しみじみと胸に沁みてきて。
ティーンエイジャーのうちにぜひ、と書き始めたけれど
大人になりかけの人にも、大人になって久しい方にも
ぜひ読んでいただきたい名作です。
- 感想投稿日 : 2013年8月11日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年7月11日
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